この1兆ドルコーチの本の内容を一言で言うと、「ビル・キャンベルという偉人の教えをハウツーとしてまとめたもの」になります。
Contents
ポイントは「愛」
さらに先に言ってしまうと、ポイント「愛」です。青臭く聞こえる言葉かもしれませんが、
シリコンバレーを作り上げたといっても過言ではない男、ビル・キャンベルという人物を知っていただくと、テーマは「愛」ということがよくわかります。
ビル・キャンベルという人物は生前本を出すことを断り続け、そのハウツーが世の中の人に浸透することはありませんでした。
しかし、それじゃいかん!と思ったエリック・シュミットたちGoogleの三人が立ち上がり、今回『一兆ドルコーチ』の出版に至ったそうです。
Appleのスティーブ・ジョブズ、Amazonのジェフ・ベゾス、Googleのラリー・ペイジなどなど、“GAFA”と呼ばれる大企業の創業者たちはこぞって、ビル・キャンベルをコーチとして仰ぎました。
その結果あまりにも多くの人を支え導いたビルの功績は一兆を超えるんじゃね?ていう意味で「一兆ドルコーチ」という題名が付けられたのです。
ビル・キャンベルとはどんな人?
シリコンバレーで働くものすごく頭の良い人たちにことごとく慕われるビル・キャンベルとは、一体何者なのでしょうか?
アメフトの世界で選手として活躍し、引退後はコーチとして活動しますが、選手を大事にするあまりいまいち結果が出ませんでした。
しかし、その後ビジネスの世界に足を踏み入れ、アメフトで培ったコーチとしての技術がここで花開くことになるのです。
この『一兆ドルコーチ』という本は、ビルの教えを体系的にまとめたハウツー本でありながらビル・キャンベルという人物の偉大さを伝える伝記でもあります。
「こんな人がいたのか!」という偉人伝として楽しんでみてください!
彼がいなかったら、AppleもGoogleもなかったかもしれないほどです。
彼がいなければ成功できなかった
彼は、毎週日曜日にスティーブ・ジョブズと散歩に行き、グーグル創業者たちに「彼がいなければ成功できなかった」と言わしめるほどの影響力を持つようになったといいます。
ビルの人柄は一言で言うと、限りなく人が好きでその性質をビジネスで活かしまくった人、です。
そうでなければ仕事仲間の家族と一緒に遊んだり、スーパーボウルを皆で観るツアーを継続させるために基金を残したり、忙しい時間の合間を縫って子供たちのコーチをしたりできませんよね。
口が汚く破天荒のように見えるけど、その奥底にはいつも愛情があって、なおかつ皆がそのことを分かっていた。
習慣のようにハグをして、人の話に耳を傾け、小さな不和も見逃さず、より良いコミュニティを作ることに全力を尽くし、何より友人を大切にした。
彼は、スティーブ・ジョブズが入院したときは毎日のようにお見舞いにいったそうです
人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない
ビルの名言として本書で取り上げられているこの一文から分かるように、ビル・キャンベルは人一倍人への関心が強い人だったのだと思います。
誰よりも人に関心を持っていて、誰よりも人の本質を見抜く目を持っていて、誰よりも人のために行動した。
僕たちが恥ずかしがって踏み込めない領域に全力で踏み込んだ人だったのです。
本書は基本コーチングの話なのですが、結局”良いコーチになる”ためには何が必要なのか?という点について、考察してみます。
この本には、お金の話や、天才との付き合い方、マネジャーの存在意義など、細かいハウツーが色々書かれていましたが
結論大事なのは、「人」、「愛」、「信頼」。
これにに尽きます。
上辺だけで真似しても再現できない
いかにうわべだけビルの真似をしたって成功には結びつきません。
大事なのは、ビルの考え方の方です。
同僚や部下の話にしっかりと耳を傾け、彼らが輝けるために全力を尽くし、雑談やボディタッチで積極的にコミュニケーションを取り、
先陣に立って愛を職場に持ち込む雰囲気を作り、約束は決して破らず、友人の頼みに必ず応え信頼関係を構築する。
これらの行動の裏側にあるビルの思考の本質を見抜き、実践すること。
それを全力でやった時とんでもない成果が生まれることは、ビル・キャンベルという人物がもう証明しています。
「人」に興味を持ち、「愛」を職場に持ち込み、「信頼」で相互に助け合う。
よく鼻で笑われるようなきれいごとも、徹底的に磨き上げればとんでもない武器になる。
そんな人類の夢みたいなことを『一兆ドルコーチ』は教えてくれています。
ビルいわく
どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネージャーのいちばん大切な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。
どのように部下と接していくのか?ヒントは本書の中で何回も登場した“雑談”というキーワードです。
会議の前、一対一で話す前、散歩中、ビルはいつでも雑談によって相手の懐に入り、たくさんの人と親密な関係を築きました。
ただ、いきなり「同僚や部下と雑談するように心がけよ」と言われても中々難しいという人もいるかもしれない。
たとえば本書で紹介されているそんなときの一歩目が、エレベータートーク。
アドビシステムズのCEOのブルース・チゼンも人間関係を築くのは得意ではありませんでした。
そこで、エレベーターで乗り合わせた人に「調子はどう?何に取り組んでいるの?」と話しかける、エレベータートークから実践していったそうです。
エレベーターで話しかけること。
日本ってその文化薄いですよね。
他にも、同僚や部下に頼み事をされたら時間や資源を惜しまずそれに応えること,
イライラしているメンバーにちょっとした声かけをすること,
プレゼンの資料を前もって渡しておくこと。
大事なのは「人」を思うことで、「仕事」という観念が邪魔していつもできないような一工夫をすることが今すぐ出来る身近なことです。
ビルはすべての人をまるごとの人間として理解し、そうすることによって、彼らにビジネスパーソンとしての力を発揮させました。
人間的価値を高めることが、ビジネスの成果をもたらす
彼は人間的価値を高めることが、ビジネスの成果をもたらすことを知っていたんですね。
仕事に愛を持ち込み、チーム・イズ・ファーストの気持ちを全員が持って、楽しい雰囲気で課題に取り組むこと。
実感として受け入れにくいこの姿こそが、チームの力を何倍にも高め、社会全体の利益を何十倍にもする、「成功の方程式」なのです。
今の価値観や常識から脱してどこまでビルの考えを実践できるか、それが鍵ですね。
これから間違いなくビル・キャンベルの原理を踏襲するものが活躍する時代がやってきます。
事実、シリコンバレーの大物たちは常に「ビルならこんなときどうするだろう」と考えながら決断をしているそうです。
ビジネスをしている人はもちろん、そうでない人も偉人の伝記として、新たな価値観の獲得するための読み物として非常に楽しめる一冊となっています。
シリコンバレーの巨人たちが”師”と仰いだコーチの真髄を、あなたも獲得してください!そのチャンスがここにあるのです。
1兆ドルを生み出したコーチングスキルの正体
さてチャンスを手に入れたい人が実践してほしい、 1兆ドルを生み出したコーチングスキルの正体は、次の4つの論点を解くことにあります。
第一の論点 マネジメントスキル
マネジメントスキルを、どうやって細部に至るまで正しく実践するか?例えば、チームメンバーの連帯感を生み出し、高めるために、旅の報告など仕事以外のプライベートな話題からスタッフミーティングを始めることなどの積み重ねが、マネジメントスキルの細部を作り上げていく。
第二の論点 信頼関係
一緒に働く人たちとどうやって信頼関係を構築するか?まずは、相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾け、相手が言いそうなことを先回りして考えず、質問を通して核心に迫ることが大事である。
第三の論点 チーム構築
どうやってチームを構築していくのか?例えば、問題や機会に直面したら、最初のステップとして、適切なチームを適所に置いて問題に取り組むようなアプローチをしていく必要がある。
第四の論点 愛を持ち込む
どうやって職場に愛を持ち込むか?人を大切にするためには、人に関心を持たなくてはならず、プライベートな生活について尋ね、家族を理解し、大変なときには駆けつけることが大事になってくる。
いかがでしたでしょうか。
1つ1つの書いてあることは、「まあ、それは確かに大事だよね」と思うことばかりでした。
裏を返すと、たとえシリコンバレーの成功企業だとしても、成功に必要な行動一つ一つは、別に目から鱗が落ちるような目新しいことにあらず。
むしろ、「ごく、当たり前の積み重ねなんだ」ということに気付くことができました。
この「当たり前がなぜ大事か」を、豊富な具体例と共に解説している点は、非常に価値が高い本だと感じました。
コーチングする立場の人にとって、当たり前の原理原則が書かれた「バイブル」といえるでしょう。
さいごに
・才能にあふれた人がいるならば、マネージャーやコーチは不要で、好きに仕事をさせたほうがよいのではないか?
・他人を出し抜く人のほうが、他人を助ける人よりも高い成果を挙げるのか?
・ビジネスでは冷静さこそが重要で、感情を出すべきではないのではないか?
上の問いに対する答えはすべて「ノー」で、それを体現していたのがビル・キャンベルであったのかもしれない。
シリコンバレーのような環境には、才能のある人材たくさんあつまったとしても、「チーム」として活動していないと大きな成果は挙げられない。
ビル・キャンベルは、個人に対するコーチである以上に、チームを機能させるコーチだったという。
また、彼は名だたる経営者に対して「チームを機能させる」を伝えるコーチでもあったと言います。
「より高みに登るほど、どれだけ他人を成功させられるかが、あなたの成功を決める」
これがコーチングの真髄だと私も考えてます。
「人間的価値がビジネスの成果に繋がる」
この言葉こそ、本書が残した最大の名言です。