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日本のベーシックインカムの意味をしっかりと知っておきましょうINコロナ渦

今回の記事では、日本のベーシックインカムの意味をしっかりと知っておきましょうINコロナ渦をお伝えしていきたいと思います。

持続化給付金などベーシックインカムのようなもの

新型コロナウイルスの生活への影響を考慮し、1人あたり10万円の給付が行われることになりました。

0歳児の赤ちゃんから、高齢のお年寄りまで年齢を問わず、全国民に給付がなされるということに驚きや喜びを覚えた人も多いでしょう。

この1人10万円の一律給付と類似したものに「ベーシックインカム」という考え方があります。

近年ベーシックインカムを取り入れた方が良いのではないかという議論が日本をはじめ、世界各地で起こっており、実際に実験的にベーシックインカムを採用した事例もあります。

そこで、今回はベーシックインカムとはそもそも何なのかについてご紹介した後、ベーシックインカムの効果や問題点について触れ、今後ベーシックインカムの議論がどのように発展していきそうなのか、予測を述べていきたいと思います。

ベーシックインカムは、現金保証

ベーシックインカムとは、年齢や性別、所得の金額に関係なく、全ての人が必ず受け取ることができる現金保障のことを指します。

日本では憲法第25条により、すべての国民が最低限度の生活を送る権利を有していることが保障されていますが、ベーシックインカムはそのような最低限の生活を送るための現金給付とも言えます。

現在の日本の制度では、失業した人に「失業保険」や定年した人に「公的年金制度」、理由があって収入がない人に対して「生活保護」など、何かしらの理由を以て現金の給付が行われています。

そのため、条件に合致しないといくら生活が困窮していても給付が受けられないケースもありますし、そもそも申請をしなくては給付がされないことが大半です。

申請なしですべての人に

一方、ベーシックインカムは無条件にすべての人に対して一律の金額が支給されるため、給付が受けられないということはありません。

今回のコロナウイルスの影響を考慮した「特別定額給付金」も、受け取る申請さえすれば全国民にもらえることをイメージするとベーシックインカムの受け取りについても理解がしやすいと思います。

また、現在は定職に就いている人であっても、今後の働き方が保障されているわけではありません。

今回の「コロナショック」でも職を突然失ってしまった人や仕事量が激減し、収入にも大きく影響が出た人など悪影響を被ってしまった人も多いと思います。

このように突発的な出来事によっても人の収入は大きく左右されますし、到来が確実視されている「AI」によっても、多くの人の仕事が取って代わられるとも言われています。

実はベーシックインカムが議論されているのも、このAI時代到来による、大量失業を見据えた上での対策という観点もあるのです。

大量失業時代に向けて

たとえ大量失業が発生したとしても、ベーシックインカム制度を導入していれば、大量失業という社会現象にもある程度の対応ができると考えられています。

逆に現行制度で対応するためには増加する失業保険の給付や生活保護の給付など、行政コストが非常にかさむことも予想されます。

このベーシックインカムの効果は3点あります。

まずは一定額が支給されることにより、それぞれの立場の人の生活が改善するということです。

生活するのが苦しいほど困窮している人にとっては最低限の衣食住を確保するために必要な資金源になりえるでしょう。

そして既に収入がある人でもベーシックインカムが支給されることで、より自分がやりたい仕事をやろうという気持ちになれたり、趣味に費やしたりする資金ができたりします。

これはQOL、つまり生活の質の向上にもつながると考えられます。

行政サービスのコストカット

次に、ベーシックインカムの導入は行政サービスのコストカットにもつながると考えられています。

ベーシックインカムを導入することにより、支給対象が増えるため行政の仕事も増えるのではないかと思われがちですが、既に述べた通りベーシックインカムは支給対象が特定されているわけではありません。

そのため、一律にその地区に住民票を有する住民に対して現金給付を行う仕事は、今までのように個々人のケースで異なる保障給付申請の審査を通すことに比べれば格段と手間が省けると言えるでしょう。

特に、現時点でも生活保護などの審査には多数の審査があり、労力も時間もかかっていることが現状です。ベーシックインカムは給付することを決めてしまえば後は給付の対応をするだけなので、よりスムーズであることが分かると思います。

また、現状では各保障申請ができるかどうか、相談のために市役所を訪れる人も多数います。そのような窓口対応もベーシックインカムでは不要なため、人員削減の面でもメリットがあると言えます。

隠れた貧困層を救う

最後の点は今まで気づかれていなかった「隠れた貧困層」を救えるということです。隠れた貧困層とは、収入がないにもかかわらず、生活保護等の社会保障を一切受けられていない人たちです。

申請をしていない/できない人や、家庭内暴力や何らかの理由があって給付対象になっていない人も未だ日本には存在していると言われています。そのような「隠れた」貧困層と呼ばれる人であってもベーシックインカムであれば給付されるため、本当に生活に窮している人たちを救えると考えられています。

ベーシックインカムの問題点

一方、ベーシックインカムにはもちろん問題点もあります。

1つ目かつ最大の問題点は財源です。国民に一律一定額の給付を行うためには、多額の財源が必要となります。いくら給付するかにもよりますが、最低限の生活を送るための資金と考えると、それなりにまとまった金額が必要になります。

それを日本全国民と考えると何十兆円や何百兆円という途方もなく大きな額が必要になることは明らかです。

2つ目がベーシックインカムに頼るあまり、働き手がいなくなるということです。ベーシックインカムは収入の代わりになるものではなく、あくまで「手助け」となるものです。しかし、ベーシックインカムがもらえることにより、働かなくても生活ができると感じてしまう人が出てきてしまうのではないかという点も危惧されています。

実際、現在も生活保護を受けている人の中には、働くための努力をしようとせず、一生生活保護のままで良いと考えている人もいると言われています。ベーシックインカムが支給されることでより豊かな生活を送れるようにすることが目的ですが、本来の目的とは異なる使い方や理解をされてしまう可能性も残念ながら否定できないのです。

ここまで、ベーシックインカムの概要、その効果や問題点についてご紹介してきました。最初に述べた通り、ベーシックインカムは日本だけではなく世界で沸き起こっている議論です。

ベーシックインカム導入事例

そして、既に実際に試験的にベーシックインカムを導入した国もあります。そこで、導入したカナダとフィンランドを例に挙げ、どのような結果になったのかも軽くご紹介したいと思います。

カナダでは、犯罪の発生率や乳幼児を含む子どもの死亡率が低下したと言われています。また、家庭内暴力などの問題も減少したことが報告されました。

やはり、生活に窮しているとどうしても窃盗や強盗といった犯罪が増える傾向にあります。また、精神的に不安定になることから殺人や強姦などの犯罪にもつながりやすいです。

一律で現金給付されるという安心感が人々の心に余裕をもたらし、社会的問題の減少につながったのだと言えるでしょう。子どもの死亡率に関しては、最低限の食事や医療費などをまかなえるようになったことも大きく影響していると考えられています。

フィンランドをはじめとするヨーロッパ諸国は税金が高い分、教育費や医療費などの社会保障が手厚いと言われていますが、フィンランドは失業率が高くなってしまったことから労働市場の活性化を狙ってベーシックインカムを試験的に導入しました。

ストレス軽減、チャレンジにつながる

その結果、生活に困窮していた人々のストレスが軽減され、綱渡りの生活から定職を見つけることが可能になった人もいたという報告がされています。

日雇い労働やフリーランスなどの収入が安定しない仕事をしていた人たちが、ベーシックインカムがもらえることによって安心感が得られ、金銭的な余裕ができたことによって職探しを始めた結果と言えるでしょう。

このように、ベーシックインカムを試験的に導入した国では、何かしらのプラスの効果が生み出されたことが分かります。

上記で問題点として述べた「働かない人が出てくる」という点に関しても、フィンランドにおいてはベーシックインカムの存在により生活に困窮していた人が自信をつけ、より自分が挑戦したかった仕事などを見つける努力をした例もあります。

すべての人がそうなるとは限りませんが、ベーシックインカムの存在が必ずしも人を怠けさせるわけではないことも示唆されているのです。

では、実際に今後ベーシックインカムの議論はどこに向かっていくのでしょうか。

コロナ禍がきっかけで議論が始まる

ちょうど新型コロナウイルスによる経済低迷の長期化や、生活環境が一変してしまった人たちの大量発生に伴い、何かしらの国民生活への補填方法が検討されると思います。その際にベーシックインカムの議論が再燃することは多いに考えられますし、他国でもこの動きは同様でしょう。

また、日本はますます少子高齢化に向かっており、現行の年金制度を続行することも困難に近くなってきているという声もあります。ベーシックインカム制度は現行の社会保障給付制度の代替となるものなので、年金制度を廃止した場合の新たな保障方法としてもベーシックインカムが注目されることはあると思います。

日本ですぐに導入は少しむずかしいが・・・

日本が率先してベーシックインカム制度を取り入れていくということは考えにくいですが、世界の国での試験的導入がさらに進み、ある程度の成果が認められるようになると日本でも試験的にベーシックインカムが導入されていく可能性はあります。

その際私達が考えなくてはいけないのは、「ベーシックインカムと共にどのような生活を送るか」です。今受け取っている行政からの給付はなくなり、一律給付のベーシックインカムに変わった場合、自分の働き方に影響は出るのか、将来的な資産形成をどのようにしていくのか、ベーシックインカムを元手にやりたかったことにチャレンジできるのかなどを考えてみると良いでしょう。

どんどんチャレンジできる世の中へ

特にベーシックインカム制度の導入を強く訴える人たちは、最後の「チャレンジ」という点に重きを置いています。ベーシックインカムが与えられることにより人々の心と金銭的状況にゆとりを与え、よりやりたいことに「チャレンジする」。

それが人々の人生を豊かにしたり、ひいては社会全体の幸福度や発展につながったりするという考えです。ベーシックインカムが今すぐに導入されるわけではないでしょうが、もし導入された場合にやりたいことを今から考えておくのも悪くないと思います。