こんにちは、アルケミストココアプールです。今回は、「幸せになる勇気」を読んでの感想とまとめを解説!アドラー心理学をさらに深めよう!ということでお送りします。
テーマは自立と愛
前回は、アドラー心理学の代表作として「嫌われる勇気」についてご紹介アドラー心理学の代表作として「嫌われる勇気」についてご紹介しましたが、その続編となるのが今回ご紹介する「幸せになる勇気」です。
嫌われる勇気を紹介した際にアドラーが唱える4つの具体的な解決方法について触れましたが、それら全てを実生活に取り入れるのは難しいかしれません。
続編である「幸せになる勇気」では、嫌われる勇気と同様に青年と哲人の対話形式で話が進められますが、嫌われる勇気で解決法を学んだ青年が実践に移すにあたって困難にぶつかった際にどのようにするべきかを哲人が説いています。
そのため、嫌われる勇気を読んでみたものの、なかなか実践に移せなくて悩んでいる人にはおすすめの続編となっています。
続編であるため嫌われる勇気で取り上げられたアドラー心理学の概念が再登場してくることもありますが、嫌われる勇気と同様幸せになる勇気についても要点を抑えて解説していきたいと思います。
まず、幸せになる勇気の全体で大きなテーマとされているのが自立と愛です。
本書は5部構成となっていますが、全ての章で述べられている考え方の根底にあるのがこの自立と愛であることを念頭に置きながら読み進めると理解が進みやすいと思います。
では、それぞれの章でどのようなことが示されているのかを順次説明していきます。
教育の目標は自立
1部では教育の目標は自立であることが述べられています。
教育と言うと学校で勉強することを思い浮かべる方も多いと思いますが、ここで言う教育とは学問を指しているわけではなく、自分自身の日々の行動が自分の人生を形成していくということを教え、必要であれば知識を与えたり経験などをさせたりすることを意味しています。
そして、このような教育によって人が自立した個を確立することこそがアドラー心理学の目指すところだと言えます。
自立を達成するにあたって妨げとなるのが、「依存」だと述べられています。
例えば何か悩み事があった時、原因は他にあり自分は被害者であるように感じてしまうことも多いでしょう。
この時、人は他の人から大変だったね、それは○○が悪いよね、という共感や同調を求めているのです。
しかし、アドラー心理学ではこのような共感や同調を求めていては自立にはつながらないことを指摘します。
悩み事に正面から向き合い、それをどのようにすれば解決できるのかを考えることこそが自立への一歩であると説いています。
さらに、自立を促すためには尊敬が必要であることも触れられています。一般的に尊敬という言葉は広く使われていますが、アドラー心理学で使われる尊敬の概念は少し異なります。
自分が相手を見る目ではなく、相手の立場に立って相手のことを考えることを意味しているのです。
ありのままの相手を受け入れると言っても良いでしょう。少しイメージが湧きづらいことなので親が子を尊敬するケースを具体例に取ってみたいと思います。
学校で子どもがいじめに遭っている子の存在を知り、何ができるのか考えていたとします。
考えた結果、いじめに遭っている子に声をかけてあげたり休み時間に一緒に遊んであげたりする行動を取ったとしましょう。
親はその子どもの行動を知り、子どもなりに精一杯考えて自分ができる限りのことをしたことを理解するのです。
それこそが子どもの視点で子どもがどのように課題を解決したのかを考えることであり、子どもを尊敬の対象として見ていることを子ども自身にも伝えられる方法なのです。
教育は自立した個を確立するために必要であり、自立を達成するためには尊敬を持って相手と接していく必要があることがこの章が伝えようとするところです。
叱ることと褒めることの効果
2部と3部では叱ることと褒めることについて触れられています。嫌われる勇気嫌われる勇気の際にもご紹介したように、アドラー心理学では叱ったり褒めたりすることは結果的に上下の関係や競争を生むため、賞罰が否定されています。
よく子どもは褒めて伸ばすという考え方もありますが、褒められなければやらないということにもつながり、褒めるという行為が褒められる側の行動の動機づけとなってしまっています。
なぜこの行為が否定されるかというと、先に述べた自立から遠ざかってしまうことと関係しているからなのです。
人は誰しも人から認められたい、評価されたいという承認欲求を持っていますが、この承認欲求は自分の価値を決めることを他人に依存していることを意味しています。
先の章で自立した個を確立することが重要であると述べられていましたが、他人に依存することは自立とは反する行為になるのです。
なぜなら、自立した人間は自分自身の価値を自分で判断できるものだとアドラー心理学では考えているからです。
仮に自分自身の価値が自分が満足できる水準ではなく不完全なものであったとしても、それを受け入れられる力こそが大事だと書かれています。
アドラー心理学では自己受容力という言葉が使われていますが、不完全な部分を含めて無条件に自分を認め受け入れることが自立につながり、ひいては自分自身を愛すことにもなるのです。
また、他者との間に競争が生まれてしまうと対人関係に課題が生じることとなります。
嫌われる勇気で触れた通り、アドラー心理学では人間の悩みは対人関係の悩みに尽きるとされているため、対人関係に課題を生じさせやすい競争は好ましくありません。
競争ではなく協力を生むことこそが良好な人間関係を構築し、悩みを軽減して幸せになるための方法なのだと述べています。
協力を生むためにも上下の関係ではなく、対等な関係を築くことが重要であることは理解しやすいでしょう。
そして、協力関係のためにも1章で触れられていた尊敬の視点を持つことが重要になってきます。
相手を相手の立場に立って理解すること、それは上下の関係で相手を見ることではなく、横の関係で相手を見ることにつながります。
尊敬の目を持って相手と接することで自然と協力関係の構築につながるとされているのです。
信用と信頼の違いについて
4部では信用と信頼がテーマになっています。信用と信頼は日常生活の中でそれほど意味の違いを意識せずに使っているかもしれません。
しかし、アドラー心理学では信用と信頼は明確に異なるものであると述べています。信用とは条件付きで相手を信じること、対して信頼は無条件で相手を信じることなのだと書かれています。
会社での仕事を例に挙げると「この人なら信用しても良さそうだ」というのは暗にその仕事であれば任せることはできるという条件が付いていることを意味しています。
一方、その相手がもしかしたら失敗をするかもしれないけれど一緒に仕事をしたいというのは信頼がベースとなった考え方です。
なぜなら、失敗するかもしれないというネガティブな要素も丸ごとひっくるめて無条件に相手を信じた上で仕事がしたいという気持ちだからです。
この2例からも分かるように、信用は割り切ることができる考え方に対し、信頼は理屈では割り切ることができないものだと言えるでしょう。
ここでも繰り返し述べてきたアドラー心理学の尊敬の考え方が必要になります。相手をありのままに受け入れて尊敬できるからこそ、相手を信頼できるということです。
そして、人を信頼することで自分の居場所となる共同体が生まれることにもなります。
アドラー心理学では幸せを手に入れるためには自分が人の役に立っているという貢献度を感じられることが重要であるとも述べていますが、自分の居場所があるからこそ貢献を発揮できることにもつながります。
現実を振り返ってみても、友人に対して何かすることで役に立っていると感じた経験がある方は多いでしょう。
貢献できたと感じられて不幸せに感じる人はまれなはずです。
このように、自分の居場所となる共同体で自ら相手に何かを与え、役に立とうとする気持ちや行動によって自分自身を認めたり愛したりすることができるため、幸せを感じられるようになるというわけです。
他人に何かを与えられたいという考え方はアドラー心理学で否定されている承認欲求ともつながってしまいますが、自ら与える、それが自己受容力につながるというのがアドラー心理学の教えるところでもあります。
愛は最終テーマである
最後の5部では最終的なテーマである愛について書かれています。
ここまでで触れてきた考え方は全て「自分が幸せになるため」の方法でしたが、最後に書かれているのは「わたし」という一個人ではなく「わたしたち」という二人が幸せになることの重要性です。
なぜならわたしという一個人が幸せであっても、相手が幸せでなければ意味がないからです。
相手を含めたわたしたちが幸せであってこそ、自分も幸せを感じられるのであり、そのためにわたしだけや相手だけではなく、二人の幸せを築くことこそが愛なのだと説かれています。
最初から述べられてきた自立という概念は、自己中心的な考え方から脱却することでもあると書かれています。
自立した個は最終的にわたし自身の課題の解決に終始するのではなく、わたしたちの課題の解決のために向き合うものだとされているのです。
さいごに:幸せを手に入れるために捨てること
以上、幸せになる勇気の要点を解説してきました。
嫌われる勇気でも出てきた考え方も多いですが、幸せになる勇気ではさらに踏み込み、実生活に取り入れていくためのエッセンスが詰まっていると言えます。
本書を通してアドラー心理学では、幸せを手に入れるためには現在の考え方の根本から変える必要があったり、課題に正面から向き合ったりしなくてはいけないことを示唆しています。
しかし、どのような方法であれつまるところは自立や愛を目指すことにつながり、それが達成できれば人は幸せになれるということも教えています。
もちろん課題に向き合うことや実践していくことには困難が伴うことが想定されますが、困難にも立ち向かう勇気こそが幸せになる勇気だと言えるでしょう。
また、自立や尊敬、愛という言葉だけを聞くと概念的な話のようにも思えますが、幸せになる勇気ではどのように自立を確立するのか、尊敬のためにはどのような視点を持ったら良いのかといった具体的な方法が示されています。
つまり、幸せになる勇気は人々が幸せになるための第一歩を踏み出す後押しをしてくれている本なのです。
アドラー心理学をこれから実践したいと思っている方も既に実践に取り入れている方も、ハードルにぶつかった際やふと立ち止まった際に自身の行動がアドラーの教えに沿ったものであるのか振り返ることのできる一書であると言えるでしょう。