さーて、今回の動画では、経営者の間で密かにではなく大大的に騒がれている、事業承継に関わる問題、後継者問題解決策、小規模M&Aについて、何が問題なのか、どうやって解決すべきなのか?サクッと整理してお伝えしましょう!
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後継者問題解決に向けて、事業承継について
今回は、私の本職である経営コンサルタントの現場から、事業承継に関わる後継者問題解決策に小規模M&Aもありえるという話をしたいと思います。
まず大前提に、中小企業庁のデータによると、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者の64%に当たる約245万人が70歳以上になり、70歳未満の約136万人を大きく上回ることになるそうです。
中小企業の経営者の高齢化は待ったなしの状況であるにもかかわらず、245万人のうち52%の127万人、日本企業全体の3分の1が後継者が決まっていないということなのです。
実はこの現状を放置すると、中小企業の廃業が急増し、10年間の累計で約650万人の雇用が失われ、約22兆円のGDPの損失につながる可能性があるということが声高に叫ばれているという状況なのです。
事業承継
事業承継とは、一般的に、閉鎖を予定する会社や同族会社のオーナー社長が、親族や従業員に、あるいは、M&Aの相手先に事業を承継、譲渡させることを言います。
事業承継は、単なる相続の問題ではなく、会社の存続に係わる極めて重大な経営課題であり、慎重に検討したうえで進めていく必要があります。
中小企業における後継者の問題と、経営者の高齢化の状況について分析していきます。
かつては比較的容易であった後継者の確保が、昨今においては少子化などの影響もあって、そもそも子供がない、いても事業に関心を示さないなどの理由で難しい状況となっています。
また、子供に対する職業選択の気遣いなどもあり、事業の承継を無理強いしていないというケースも増加しています。
中小企業の後継者不足の現状についてですが、売上規模が1億円未満の企業にいたっては、78.2%もの高い数字を示しており、やはり、中小企業のほとんどがなんらかの後継者問題を抱えていることがわかります。
中小企業の経営者は60歳代後半が最も多く、さらに高齢化が進んでいます。
経営者の高齢化は、基本的には、先で述べた後継者不在問題が解消されないことによるものですが、後継者がいないために自身で事業を続けているという場合だけではなく、事業の将来性のなさを考えてこのまま自身の代で終わらせることを決断している場合もあります。
事業承継が進まなかった理由として、「将来の業績低迷が予測され、事業継続に消極的」というものが最も多く、「後継者を探したが、適当な人が見付からなかった」がそれに続くものとなっています。
つまり、単に後継者がいないために経営者としての地位を維持しているわけではないことがわかります。
この結果が意味するところは、中小企業の経営者はできるところまでは自身で事業を継続させるが、その後は廃業を考えているというものであり、政府においてもこのあと到来するであろう団塊の世代の引退時期に大きな懸念を抱いています。
事業譲渡と事業承継の違い
事業承継とは別に、事業譲渡というものがありますが、これは、会社の事業を後継者に引き継ぐというものではなく、事業の全部または一部を第三者に譲渡もしくは売却することを指します。
例えば、複数の事業を行っている会社が、特定の事業だけ譲渡したい場合や対象会社に存在する債務を切り離すことを目的として選択される手法です。
後で説明するM&Aの一種になりますので、広い意味では、事業承継の手段のひとつであるとも言えます。
事業承継では、その会社が培ってきた様々な財産を後継者に承継することになりますが、その財産を大きく分けると、「人」、「資産」、「知的資産」の3つの要素に分類できます。
人の承継
まず、人についてですが、中小企業においては、「知的資産」におけるノウハウや取引関係との人脈などが経営者個人に集中していることが多いため、事業の円滑な運営や業績が経営者の資質に大きく左右される傾向にあります。
人、つまり、経営者に集中している「経営権」の承継という意味になります。
資産の承継
株式、設備や不動産などの事業用資産などの「物」、運転資金や借入金など「金」のことです。会社保有の資産価値は自社株の評価となるため、事業承継でまず考えるべきは株式の承継になります。
知的資産の承継
経営理念、従業員の技術や技能、ノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈などがこれに当たります。
知的資産こそが会社の強み、価値であることから、この知的資産を承継することができなければ、その企業は競争力を失って事業の継続も難しくなります。
現経営者は、自社の強みや価値がどこにあるのかを理解し、これを後継者に承継していく必要があります。
何を引き継ぐのか?存続は可能なのか?
事業承継とは、一般的に、現社長から後継者に事業を引き継ぐことを言います。
具体的には、「会社の経営」とともにその基盤である「自社株」を後継者に譲渡することです。
株式や預金、土地といった財産の相続の側面というのも当然ありますが、それ以外の、たとえば経営理念など目に見えないものや、取引先や従業員に対する責任など、「経営」を幅広く引き継ぐことになります。
現社長は事業承継を考える際、複数の選択肢(出口)を検討しなければなりません。
したがって、最も大切な問いになるのが、いまの会社は「存続可能な会社か?」ということです。
存続可能な会社で後継者がいれば、いわゆる「親族内承継」が選択肢となります。
存続が難しい、あるいは、家族・親族のなかに後継者がいないという場合は、「事業売却」といった選択肢を検討することになります。
これらの準備について詳しく説明していきましょう。
第1:後継者の選定と育成
後継者には社長としての資質と覚悟のあるベストな人財を選ぶ必要があります。
とは言っても、最初からすべてを兼ね備えている後継者はごく僅かです。
後継者に高い経営力が身に付くよう育成しなければなりません。
第2:事業承継を行うための環境整備
現社長だからこそ今の経営スタイルが成り立っている、という会社が多いものです。
したがって、承継後の経営の仕組み(例えば、経営理念やビジョンの擦り合わせ、ビジネスモデルの変革、ミドルアップダウン経営への移行など意識して整備していかなければなりません。
第3:自社株対策・株主対策
自社株は「財産権」と「経営権」の2つの面を持っています。
もめない相続や株価引き下げなどの自社株対策はもちろんのこと、後継者への自社株承継や、分散株式の集約などで「経営権の安定」をはかる必要があります。
事業譲渡はなぜ進まないのか?
そこで事業譲渡についてですが、ニーズは高いはずなのに、なぜ、第三者に承継するM&Aが進まないのでしょうか?
M&Aに対するネガティブなイメージや検討することへの抵抗感、優先順位の低さなど、経営者の心理的な壁があるということが言えるかもしれません。
しかしながら私は、事業売却、すなわちM&Aこそ一番初めに検討すべきことだと考えます。
「最初にご子息や親族を検討してダメだったらM&Aを考えるケースが多いが、本来は順番が逆のはず。第三者がM&Aをしてでも買いたいと思う事業を、大切な親族やご子息に継がせるべきではないか」
と。
さらに、M&A支援機関の対応範囲のミスマッチがある。
そもそも中小企業の経営者が証券会社や都市銀行などの大手金融機関にM&Aの相談に行っても、「相手にしてもらえないのではないか」という気後れがある。
かといって地元金融機関に相談しても、M&A先の仲介やマッチングの領域に限界がある。
引継ぎ支援センターなどの公的機関もあるが、こちらはエリアが広範囲でも扱う事業規模が小さいといった課題があります。
そこで、しっかと知識を持った上で、専門家に相談する必要があるのです。
最後に整理しましょう
M&Aによる事業承継の基礎とメリットとしては、事業承継で後継者問題も雇用継続も相続問題も一気に解決できるということにあります。
M&Aによる事業承継のメリットは以下の5つになります。
- 後継者難⇒後継者不在で事業を他社に承継
- 株式相続問題⇒事業を承継しない相続人の株式を譲渡
- アーリーリタイア⇒早期に事業から引退
- 本業集中⇒本業以外の事業を他社に継承して本業に集中
- 事業転換⇒今の事業を他社に継承して他の事業に転換
そして事業承継の最大のメリットは、会社を廃業したら何も残らないし、お金も入らないが、事業承継であれば事業譲渡代金が手に入る可能性があるということですね。
たとえば、会社の整理だと不動産の処分がせいぜい。ところが、事業承継であれば、ブランドも雇用も顧客も継承できます。
また承継する会社は通常同業大手ということが多いので一層の成長が期待できます。
事業承継により創業者一族には株式売却代金が入り、相続税を支払うことができるようになります。
また地域経済にとって、その会社が提供しているサービスが無くならないということで、メリットが大きいですね。
事例
ここでは新潟県の老舗の酒蔵の事業承継の成功事例について説明します。
- 後継者難だからといって、長い歴史に幕を下ろすわけにはいかない。
- 従業員も育っており、ブランドも顧客もあり、それは大きな財産。
- 会社を整理したら、単なる蔵の不動産処分になってしまうので二束三文。
- 事業承継であれば営業利益や純資産で評価するので高い譲渡価格が出せる場合が多い。
- 同業の大手に引き継いでもらったので、従業員の給料も上がり、販路も拡がり、業績も向上した。
- もちろん、ブランド、顧客、雇用の継続ができた。
- 地域にとって も地場産業の継承になりメリットが大きい。
そこでこのあと説明する2ステップに移行していきましょう。
まず1ステップめは、事業承継へ向けての準備と課題解決が必要になります。
- 事業承継の目的を明確化する。
- 事業承継をスムーズにするために書類や会計の整理をする
- 決算対策や財務改善について専門家と相談して進める
2ステップめは、事業承継の具体的な進め方を決めていくことになります。
- スキームや条件を決める
- 事業承継アドバイザーなどの専門家に相談
- 投資銀行などを通じてアドバイザーに承継先企業を探してもらう
- 実地による監査やヒアリングなどがはじまります