今日は、「不死鳥フェニックス」で有名になったOWNDAYS社長の新著「大きな嘘の木の下で」に書いてあることが良すぎたので解説してみた!をおおくります!
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大きな嘘の木の下で〜僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ〜
田中修治 (たなか しゅうじ)
OWNDAYS株式会社代表取締役社長。
20代の頃から起業家として活動。
2008年に巨額の債務超過に陥り破綻寸前だったメガネの製造販売を手がける小売チェーンの株式会社オンデーズに対して、個人で70%の第三者割当増資を引き受け、同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。2013年にはOWNDAYS SINGAPORE PTE LTD.、2014年にはOWNDAYS TAIWAN LTD.を設立。
2020年3月現在、12か国340店舗を展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続けている。
要点1
お金とは単なる「交換ツール」である。いざという時に本当に自分を助けてくれるのは、自分を必要としてくれるたくさんの人たちとの「信頼関係」だ。
要点2
「労働」とは、主に収入を得る目的で体や知能を使い、働くことである。一方で「仕事」とは、誰かの願いを叶えるために、自分の価値を提供することだ。これからの時代は人から必要とされる、本当の意味での「仕事」に集中するべきである。
要点3
今の時代に求められているのは、働く人を巻き込んでアイデアをもらっていく、巻き込み型の経営だ。それを実現するためには、あらゆることをガラス張りにし、公明正大にすることが大切である。
まず、お金は「交換ツール」でしかない
お金持ちになるためには、まず「目の前にあるお金は、ただの紙切れだ」と認識することが重要だ。
この考えには、著者のアルバイト時代の経験が大きく影響している。
当時ミュージシャンを目指していた著者は、忙しいバンド活動の合間にバイトに精を出していた。選ぶ基準は「時給の高さ」のみ。
効率だけを追い求めていたからだ。
しかしその仕事を始めてから1年が経った時、
自分の人生の時間を、切り売りしてお金と交換している
という感覚に全身が包まれた。
そしてそれはとても悔しい体験でもあった。
なぜなら当時の仕事は単調な機械的作業であり、自身にとって得るものがほどんどない、「価値のない仕事」と感じたからである。
お金を扱う時は「高い・安い」で捉えるのではなく、「その交換が自分にとって本当に価値があるか?」という目線で考えることが大切だ。
そうすればお金がただの「交換ツール」だとわかり、不利な交換にも気づけるようになる。
「出世」という言葉の本当の意味
一般的に「出世」とは、「社長になった」、「お金持ちになった」など、社会的なステータスを手に入れた状態だとされるが、その認識は大きく間違っている。
著者の哲学における「出世」とは、「人から必要とされるようになる」ことだ。人から必要とされた結果として、社長になれたに過ぎない。この本質を見誤ってはいけない。
OWNDAYSの若い社員の中には、「苦労してまで出世したいとは思わない」、「給料もそんなにいらない」と本気で言う人がいるが、それでも著者は常日頃から「出世したほうがいいよ」と提言している。
それは不幸になった時の波及効果のほうが、幸せになった時のそれよりも大きいためだ。
社長のもとには「親が亡くなった」「家族が重い病気に罹ったので長期休暇を取ります」などという申請がひっきりなしに届く。
OWNDAYSの福利厚生規定では、慶弔見舞金が二親等まで出る。この二親等以内の親族者というのは、日本の平均値では「社員数×8人前後」を指している。
つまり会社は雇用者の約8倍の人間の不幸に対して、フォローする責任を負っているといえる。
このような経営者側の視座から言えること。それは、「出世した人」=「人から必要とされている人」は、多くの人から助けてもらえるということだ。
いざという時に自分を助けてくれるもの
親から「貯金してるの? いざという時に困るわよ」と言われたことのある人は多いのではないだろうか。
しかしいざという時に本当に自分を助けてくれるのはお金ではない。
その時までに培った自分の価値と、その価値を必要としてくれる人たちとの信頼関係だ。
だから若い時こそ、お金よりも大切なものをたくさん身につけ、必要とされる人材になるべきなのである。
今一度、自分が不幸になる確率をきちんと計算して考えてみてほしい。
いざ自分の身に不幸が降りかかった時、慌てふためいて「助けて」と懇願しても、普段から人に必要とされていなかったら、誰も助けてはくれないだろう。
「労働」とは、体を使って働くことだ。特に収入を得る目的で、体や知能を使って働くことを指す。一方で「仕事」とは、誰かの願いを叶えるために自分の価値を提供することである。
「労働」は、時代の変化に伴って常に新しく生み出されるが、それと同時にテクノロジーの進化によって常に消滅していく運命にある。
ゆえに著者は「労働」を嫌い、今後労働をするような人はいなくなっていくと予想している。一方で、使命として働いている人や、意味を見いだして働いている人は、多くの人から必要とされ、さらにその価値を高めていく。
労働をしている人と、仕事をしている人の違いとして、ある事例を紹介したい。
著者が、とある家電量販店へ商品を見に行った時のことである。
家の洗濯機が壊れたので、ひとまずネット検索をしてみるも、どれを買ったらいいのかまるでわからない。
仕方なく家電量販店に行き、店員に商品の説明を求めた。
しかしいざ説明を聞いてみると、専門的な言葉のオンパレードで、著者にはちんぷんかんぷんだったという。
「よくわからないけど、結局どれがいいの?」と聞くと、「ご予算は?」という質問が返ってきた。
「別にいくらでもいいよ」と答えると、「いくらでもいいよと言われましても……」と口を噤んでしまう。結局、再度ネットで口コミを調べることになってしまった。
この時の店員の対応は、まさに労働である。顧客の望みを理解できず、自分に価値があることを顧客に示せなかったのだ。
逆に、自分のことを理解してくれて、プロとしてレコメンドをしてくれる店員は信頼できる。
このように、お店が人で選ばれる時代になるのは遠い先の話ではない。
だからこそ「労働」と思われるような仕事を辞め、自分の使命や意味に集中し、一人でも多くの人から必要とされる存在となるべきなのだ。
仕事をゲームに変える
「ゲーミフィケーション」という言葉がある。ゲームデザイン要素やゲームの原則を、ゲーム以外の物事に応用することをいう。
著者はOWNDAYSの仕事を、仕組みや制度によってゲーム化している。
仕事をゲーム化するためには、5つの要素が必要だ。
「成長」「育成」「バトル」「収集」「交換」である。順を追って説明する。
(1)成長
これは自分の役職階級が上がることや、給料が上がることで感じられる。この時大事なのが、RPGゲームでよく見られる、レベルアップ時の効果音だ。
とはいえ現実世界でそうした音をいちいち鳴らすわけにはいかないので、代わりにユニフォームに付けるバッジの色を変えている。大切なのは、あくまで目に見える「成長の証」を演出することだからだ。
(2)育成
これはそのまま、部下や後輩の育成を指す。OWNDAYSでは、教育は専門の担当者に任せるのではなく、共にみんなで学び、教え合うことを文化としている。
「育てること」で自分だけでなく、後輩の成長した証も手に入れることができ、喜びを分かち合える。
(3)バトル
ゲーム化する為の5つの要素のうち、最も盛り上がるのが「バトル」だ。戦いや勝負事には、我を忘れて熱くなれる。
OWNDAYSでは管理職に就任する仕組みとして、選挙制を採用している。店長になりたい人、エリアマネージャーになりたい人は立候補し、選挙演説をして、周囲の支持を得なければならない。
管理職の座を競ってしのぎを削る様子は、まさにバトルだ。
楽しく遊んだほうが効率よく仕事できる
ここまで述べた3つの要素は、どんな仕事でも体感できるため、比較的簡単に演出できる。難しいのは残りの2つだ。これらについてもそれぞれ見ていこう。
(4)収集
これはゲームでいう「コイン」のような役割だ。OWNDAYSでは、「ポケモンGO」と航空会社のマイルの仕組みをミックスした、「OWNDAYSマイル」という仮想通貨が用いられている。
マイルは予算達成や無遅刻・無欠勤など、会社貢献度に応じて与えられる。また独自アプリである「STAPA」によって、マイルの管理を行なっている。
(5)交換
貯まったマイルは、さまざまなものに交換できる。ダイソンの掃除機や海外旅行など百種類に及ぶ景品や、規定の有給休暇以外の「休暇」にも交換可能だ。
またマイルは、社内の人と自由に贈り合うこともできる。シフト交代のお礼や誕生日のお祝いなど、社員同士の信頼関係構築にも一役買っている。
さらにバトルにも対応している。バトルの日程と賭けるマイル数を指定し、全国の店舗にバトルを仕掛けることが可能だ。勝ったチームは、負けたチームのマイルを奪うことができる。
ゲーミフィケーションによる仕事のゲーム化は、過去に「仕事は遊びじゃない。真面目にやれ」と言われた反動からきている。
楽しく遊ぶことの何がいけない?
むしろ楽しく遊んだ方が、効率よく仕事ができるはずだ。
【必読ポイント!】 経営論のウソ
社員の不満を解消しようとするのは無駄
著者が経営者として取り組んできた改革の中で、一番的外れだったのが「スタッフの不満を解消しようとすること」だった。
何度も何度も湧き上がるスタッフからの不満は、解消しても解消しても決してなくならなかった。この時、人間とはわがままな生き物であるがゆえに、不満はいくら解消してもなくなりはしないと悟ったという。
大事なのは、「不満だが納得できる」状態にすることだ。
著者はどうすればスタッフが納得できるかを考え抜き、会社にまつわるすべての事柄を、できる限りオープンにするという結論に至った。
「公平で透明」な待遇・機会に、人は納得するのだ。
会社の一番の敵は社長だ!
会社の一番の敵は、実は「社長」である。というのも企業のトップはその権力を使って、スタッフが築き上げたすばらしい功績を、一瞬でぶち壊すことができるからだ。
だから高い道徳心や強い精神力が必要なのだが、人間はそんなに強くない。特に著者は精神力が人一倍弱く、誘惑にも弱いと自身を分析する。
だからこそ「なんでもかんでもオープンにする」というOWNDAYSのスタイルは、会社の一番の敵である社長自身を攻撃するための強力な武器になっている。
人事は選挙で決めた方が絶対にいい
人事制度に選挙制を取り入れているOWNDAYSだが、この理念と効果についてもう少し深堀りしたい。
技術や知識・経験はいくらでも与えられるが、「やる気」は誰にも与えることができない。やる気とは、自身の内面から絞り出されるものだからだ。
選挙制を取り入れた効果として一番大きかったのは、「直属の上司が嫌な奴だったとしても、自分の出世には何も影響がない」ということだ。
上司に人事権がないため、たとえ馬が合わなくとも周囲の支持を得られれば、上司の座を勝ち取ることもできる。
「自分の保身のために上司に気を遣う」というストレスがなくなったことにより、離職率の低下にも繋がった。
「最近の若い奴はすぐ会社を辞める」の真実
著者が25歳だった17年前のデータと比較しても、たしかに今の若い人の離職率は高いようだ。
しかしだからといって、今の若者が昔の若者に比べて根性がない、精神的に弱いということではない。
結論から言うと、スマホの普及によって、転職するのがとても簡単になっただけである。
テクノロジーの進化によって、情報量と情報へのアクセス性、スピードが桁違いに高まった。
昼休みの30分もあれば、気になる企業の情報をかき集め、担当者へ連絡し、アポを取れてしまう時代である。
単に昔の若者は、情報をかき集める労力に挫折し、転職まで忍耐力がもたなかっただけだ。
これはすなわち、「若い社員はすぐ他の会社に奪われる」ことに他ならない。
すぐに他社から人材を奪われる時代だからこそ、必要なのは働く人を巻き込んでいくような経営である。
そのためには、なんでもかんでもガラス張りにすることが重要だ。清く正しく公明正大に。働く人から選ばれる会社こそが、これからの時代を生き残っていく強い会社である。
会社が倒産に向かって走り出す時
企業理念は、目的・目標・手段の3つから説明できる。
OWNDAYSを例にとると、
目的=「関わる人たちを豊かにする」
目標=「売上1000億円、利益100億円」
手段=「メガネを販売する。世界的なアイウェアブランドを作る」
となる。
ここで問題なのが、目的と手段はどちらも「どこまで行っても終わりがない」という点で、非常に似ていることだ。
だから多くの経営者が道を間違えて、会社を倒産させてしまう。
しかし目的と手段を間違えてはいけない。OWNDAYSが経営危機に見舞われた際も、「メガネを販売する」という手段に囚われず、真の目的である「関わる人を豊かにする」ことを見失わなかったからこそ、危機を乗り越えることができたのだ。