この記事は、ベーシックインカムについて日本での導入のメリット・デメリットそして、各党の政策との関係についてもう一度整理しましょうという内容です。
Contents
改めまして「ベーシックインカムとは?」
最初に、今回の動画で伝えたいポイントは3つあります。
- ベーシックインカムとは?
- 世界のベーシックインカム
- 日本のベーシックインカム
についてです。
ベーシックインカムとは、政府が国民に最低限の生活を送るのに必要な現金を支給する政策です。
ベーシックインカムのことを、基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障、国民配当ということもあります。
社会保障とベーシックインカムは混同されることも多いのですが、ベーシックインカムは無条件で国民に一定の金額を給付するため公平無差別な定期給付になります。
積極的ベーシックインカム推進論には、それを導入するかわりに、生活保護や最低賃金などの各種の社会保障制度を消滅させて、そして福祉政策や労働法制を廃止へ、という考えもあります。
ベーシックインカムの歴史
歴史的に賃金補助制度を振り返ると、1597年、イギリスで人々から救貧税を徴収して貧民を救済する制度である救貧法。
そして、1601年にはエリザベス救貧法が制定され、救貧は地方ごとではなく国家単位で行われました。
18世紀末になるとベーシックインカムの構想が出現し、トマス・ペインとトマス・スペンスはその最初の提唱者といわれています。
トマス・ペインはイングランドの哲学者で、国民が21歳の時に15ポンドを成人として生きていく元手として国から給付され、国民が50歳以降からは年10ポンドを年金として国が給付するという案を1796年の著書である『土地配分の正義』にて発表しました。
トマス・ペインの次にベーシックインカムを提唱したのはトマス・スペンスで、彼もまたイングランドの哲学者です。
トマス・スペンスは地域共同体ごとに地代を集め、公務員の給料などを差し引いた後の剰余を、年間4回にわたり国民に平等に分配するという案を、1797年の著書『幼児の権利』において発表しました。
上記の二人のあとには、1848年、ジョセフ・シャルリエが地代を社会化し共有化してそれを財源するベーシックインカムとする構想を、彼の自著である『自然法に基づき理性の説明によって先導される、社会問題の解決または人道主義的政体』において発表しました。彼はベルギーの思想家です。
同年、J・S・ミルが、労働のできる人にもできない人にも一定の最小限度の生活資料を割り当てるというベーシックインカムの構想を、自著の「経済学原理」の中で発表しました。
その40年後にあたる1888年、米国の作家で社会主義者でもあるエドワード・ベラミーが、ベーシックインカムに近いシステムを彼の自著である『顧みれば』の中で記載しています。
この時は、分配の方法がクレジット・カードであることは、当時としてはとても新しい手法でした。
現代のベーシックインカム
20世紀からは、研究者という立場でベーシックインカムについての構想を考える人々が多く現れます。
C・H・ダグラスは、20世紀においてのベーシックインカム構想を考える上で、欠かせないといわれている人物のひとりです。
ダグラスは社会信用論というシステムを発表して、月5ポンド の国民配当を提唱しました。経済学者のケインズは最初は否定的な立場をとっていましたが、のちに肯定的な立場へと考えが変わりました。
W・ベヴァリッジは経済学者のケインズと共に、ケインズ=ベヴァリッジ型福祉国家を提唱しました。
ベヴァリッジは、社会保険を中心としながらも補足的なものとして公的扶助をおくモデルも発表しました。
これは、稼ぐ能力の喪失や不足に陥った時の所得保障により貧困を防止する。という考えから発表されました。
20世紀半ばに入ると、イギリスの女性作家で経済学者のジュリエット・リズ=ウィリアムズが、ベーシックインカムについて具体的な数値を用いて提唱しました。
ジュリエットは、社会配当(basic allowance)と呼ばれるベーシックインカムに極めて近いものを発表し、その給付額は週1ポンドかつ扶養する子供一人当たりに週0.5ポンドとしたものでした。
税を財源をとし、ミーンズテストを行わない点がベーシックインカムと似ていますが、就労の意思が無く家事労働にも従事していない人については給付対象外とした点がベーシックインカムの構想とは異なります。
そして、ジェイムズ・E・ミードは、社会保障のシステムについて社会保険方式ではなく税方式を提唱し、ベーシックインカムを社会配当という呼称で提唱しました。
ジェイムズは、ベーシックインカムにより有効需要を創出かつ労働需要を減少させ、社会保障や経済などのサイクルを循環させることができるという考えを持っていました。
経済学者のM・フリードマンは先述のリズ=ウィリアムズの影響を受けたとされ、1962年、負の所得税について「資本主義と自由(Capitalism and Freedom)」で発表しました。
ベーシックインカムのメリット・デメリット
1986年には、現在の「ベーシックインカム地球ネットワーク」であるBIENが設立されました。
メンバーには、ベルギーの哲学者であるフィリップ・ヴァン・パレースなどがいます。
21世紀の現在、ベーシックインカムのメリットとデメリットとしてあげられている事柄のいくつかを挙げると、
メリット
- 貧困対策
- 少子化対策
- 地方の活性化
- 社会保障制度の簡素化
- 行政コストの削減
- 労働意欲の向上
- 景気回復
- 余暇の充実
- 非正規雇用問題の緩和
デメリット
- 富裕層に対する支給
- 個人に対して責任を高く負わせる制度
- 福祉水準の低下
- 将来不安
- 景気回復しない
- 賃下げの懸念
- 財源の不安
- 精神論的なもの
- 勤労美徳
ベーシックインカムの財源案について
現代の日本においてベーシックインカムを行う場合、日本国民全員に毎月4万6000円のベーシックインカムの支給をスタートすることは、1円も増税することなくが可能であるといわれています。
計算上においては、現在の年金や生活保護、そして、雇用保険や児童手当などの各種控除をベーシックインカムに置き換えることで、それは実現可能とされています。
日本の社会保障給付費から医療を差し引き、これを人口で割ると月額4万6000円ほどです。
ベーシックインカムの財源案としては、さまざまな提案がなされています。
- 税収
- 政府紙幣/ヘリコプターマネー
- 通貨発行益/日本では森永卓郎、関曠野、白崎一裕などが提唱
- 無税国家論/松下幸之助の提唱した無税国家方式
- 資源
- 鉱物/日本の領海の海底に存在するとされる
- エネルギー/宇宙太陽光発電等々
世界のベーシックインカム
新型コロナウイルスの感染拡大によって、今年は、コロナ関連でのベーシックインカムの議論がされています。
今年の3月中旬ごろには、イギリスのボリス・ジョンソン首相が、一時的なベーシックインカム実施を検討している考えを示したようです。
政府がすべての国民に、一定額を無条件で支給するベーシックインカム制度は、フィンランドなどではすでに実証実験が始まっています。
この際、フィンランド政府が2年間ベーシックインカム給付をして分かったこととして、フィンランドでは主観的な幸福度に効果があったと結論づけたようです。
ヨーロッパでは、オランダでもユトレヒトなどいくつかの都市で、フィンランドと同様のベーシックインカムについての給付実験が計画されています。
また、ヨーロッパは世界の中でもベーシックインカムの議論が特に盛んに行われている地域で、スイスは、ベーシックインカム制度が実際に導入されるかが国民投票が世界で始めて行われた国です。
プライベートカンパニーによるものでは、カリフォルニア州オークランドでスタートアップアクセラレーターのYコンビネータが導入実験を行い、ドイツのベルリンではクラウドファンディングをもとにして、ベーシックインカムのスタートアップが立ち上がったりしました。
ベーシックインカムについては、今までにも類似の実験が世界各国で行われてきました。
かつては、1960年代の終わりから70年代にアメリカ合やカナダ、21世紀に入ってからは、ナミビア、ブラジル、インド、ケニアなどでも行われています。
ナミビアやインドの実験ではコミュニティ全体が給付をうけていたので、結果的にコミュニティ全体が良い方向に向かったと結論付けられているようです。
ベーシックインカムに対して賛成でない人々のよくある意見のひとつに、ベーシックインカムがあると単純作業などの仕事をする人がいなくなってしまうのでは?という意見もあるようです。
しかし、それに対して賛成派側の意見は、AIの発達やさまざまな人間界の進歩により近未来にはその種類の仕事(単純職業まるごと)はすでになくなっているので、心配はないという意見もあるようです。
日本のベーシックインカム
日本でのベーシックインカムの導入を希望している場合、まず、最初に、簡単に出来ることとしては、ベーシックインカムのことについてよく知り理解することや選挙へ投票に行くことかもしれません。
自分で良く知り理解することで良く考え自分の見解を持つことも出来ますし、自分の見解としては賛成の立場か、賛成ではないのか、なぜそうなのか、色々分かります。
ベーシックインカムのことについて少し調べてみると、実にさまざまな人たちが意見を持って持っていて、それぞれの見解を出しています。
また、実際に行われた実験結果の数値や前後の変化、どうすれば実現可能かなどについて簡単に見ることができます。
さいごに、各政党の賛否比較について
ではさいごに我が国の政党のベーシックインカムについての構え方について差語にまとめたいとおもいます。
日本でベーシックインカム導入をマニフェストに盛り込んだ政党は、国民民主党、緑の党グリーンズジャパン、オリーブの木
ベーシックインインカム導入に賛成
希望の党/基礎年金、生活保護、雇用保険等をベーシックインカムに置き換えることを検討します。
ベーシックインインカム導入にやや賛成
日本共産党/ベーッシックインカムは憲法25条に規定された国民の生存権などにてらして積極的な意味を持っており、検討に値すると考えています。
日本維新の会/理念は正しい。ただし課題は多い。
立憲民主党/所得控除から税額控除への転換、さらには税額控除から給付付き税額控除へと税体系を変えていくことを提起し、これを日本型ベーシックインカム構想と呼ぶこととします。
社会民主党/諸外国で始まっている実験的導入の成果も見ながら、日本でも導入を検討するべきと考えます。
沖縄では、2018年琉球料理研究家の渡口初美(83)が無条件ベーシックインカムを沖縄県で実現することを公約に掲げ沖縄県知事選挙へ出馬しました。